メリトクラシーがAIに委ねられるとき

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メリトクラシーは、メリットによる支配、能力実力による支配という意味です。能力主義、実力主義とも訳されます。

メリトクラシーの概念は、中国の科挙など、何世紀にもわたって存在してきましたが、その用語自体は1958年に社会学者のマイケル・ヤングの風刺的なエッセイ「メリトクラシーの台頭」で最初に使われました。似た概念で、技術官僚テクノクラートによる支配は、テクノクラシーと呼ばれます。いずれも効率優先社会ということになります。

https://ja.wikipedia.org/wiki/マイケル・ヤング(社会学者)

https://en.wikipedia.org/wiki/The_Rise_of_the_Meritocracy

それは未来のイギリス社会において、知性と実績が社会の中心原理となり人間性が放棄されたディストピア(暗黒郷)を描いたものでした。従来の社会的階級の代わりに、実績を上げた権力のあるエリート階級と、実績を上げられず過小評価された下層階級を造り出すのです。

これは当時イギリスで実践されていた「三者教育システム」を風刺したものでした。

https://en.wikipedia.org/wiki/Tripartite_System_of_education_in_England,_Wales_and_Northern_Ireland

それは公的中等教育において、11才当時の学力試験の成績により次の3種類の学校に分けられて教育を受けるシステムです。

grammar school、上位25パーセントの生徒が通うエリート教育の「文法学校」。文法というのは知識人の証であるラテン語の文法のことを指します。公的資金も優先的に割り当てられた。

secondary technical school 、中等技術学校。技術的および科学的な科目に精通した子供たちを訓練するために設計された。科学者、エンジニアおよび技術者になることができる生徒を作成するために、物理学、化学、高度な数学および生物学などの高い学術水準を提供する学校。

secondary modern school、中等現代学校。単純労働や家事従事者を養成するために実践的なスキルを訓練する目的の学校であるが、多くの学校では、すべての学問分野(数学、地理、英語と文学、物理学、生物学、経済学など)の最低限度を修められる教育を提供した。

実質的に11才で将来の職業まで決められてしまう階級社会が批判されたのです。もちろん、裕福な家系では試験対策をみっちり行うことができますから、従来の階級社会を固定する作用があったでしょう。これは現代日本の中学受験ブームにも通じる批判かもしれません。

メリトクラシーは実力主義、実績主義ですから、生産性至上主義の社会になります。生産性を追求すると、人間よりもAIが優先することになります。政治家も会社経営者も、管理職も専門職も含めて、あらゆる分野で、生身の人間よりも、AIの方が優秀なパフォーマンスを上げるでしょう。AI、具体的にはニューラルネットワークが、画像認識と音声認識の分野では、既に人類を凌駕する段階に至っています。あらゆる分野でAIが人類を越えた時、AIに劣る無用者階級はどのように扱われるのか、想像することが必要です。

イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリさんは、「ホモデウス」第9章で、社会の繁栄に何の貢献もしないし必要とされない巨大な「無用者階級」が出現するだろうと予言しています。必要とされない人々は、薬物とコンピューターゲーム(VR世界)に時間を費やす可能性があるということです。生産性が極限に達した社会において、無用者階級は働く必要もなく生き長らえることができますが、やり甲斐のある現実世界の仕事をすることはできず、VR世界の中でしか生きられないというのです。

※参考記事

ニューラルネットワーク、ディープラーニング

AIの画像認識率が既に人類を超えてる件

AIの音声認識率も既に人類を超えてる件

ホモ・デウス下巻

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