デジタルゴールドラッシュが起きて、ビットコインが上昇を続け、2024年12月には10万ドルも突破する急騰を見せています。今後の展開はどうなるのか、各自の考えを持っておく必要があります。
いまだかつてインフレから逃れることができた通貨は無い
なにしろ、伝説のファンドマネージャー、マーク・モビアス氏は、「いまだかつてインフレから逃れることができた通貨は無い」と述べておられます。それは江戸時代の貨幣改鋳の歴史を見ても明らかです。オランダ、スペイン、イギリス、アメリカの世界覇権の推移をみても明らかです。
じゃあ、ビットコインの理論価格はどうなるでしょうか。良くネット記事で、ビットコインの理論価格は4000万円などという記事があり、眉唾で見過ごしていると思いますが、当サイトの見解を記しますので、各自考えてみてください。
ビットコイン価格の考察
- ビットコインは有価証券ではない。有価証券は誰かに対して何かを請求できる権利=債権を紙などに代替させたものだから、「誰にも何も請求できない」ビットコインは有価証券には成り得ない(従ってインサイダー取引規制も存在しない)。ちなみに法定通貨は、各国の中央銀行に対して通貨の存在を認めさせる権利です。例えば紙幣が汚損した場合には、銀行に持ち込むと新券に交換(新札両替)してもらうことができます。ビットコインにはネット上の合議制のコミュニティは存在しますが、ビットコイン所有者はコミュニティに参加しているだけで、具体的に何かを請求できるわけではありません。ナカモトサトシが考案したホワイトペーパーに従ってビットコインのソフトウェアが開発・運用され、過去において偶然にもビットコインの価値が存続してきたという経験則が持続してきただけです。
- ビットコインには裏付けとなる純資産が無くPBR(純資産倍率)がゼロである。ちなみに日経の平均PBRは約1.2倍です。会社が1株あたり100円の資産を保有している場合に、その1株を120円で購入しているというのが日経平均の標準的な姿となります。世界各国の中央銀行は法定通貨の金本位制度を廃止した後、法定通貨と金の交換を約束はしていないが、それでも、金を保有し「事実上の裏付け資産」としている(金準備について)。世界の基軸通貨ドルを発行する米国は8133トンの金塊を保有し、世界通貨基金IMFは2814トンの金塊を保有している。
- ビットコインは利益を生み出さないのでPERが無限大である。ちなみに日経の平均PERは約25倍(益回りで4パーセント)です。会社は事業を行って収入から経費を差し引いて純利益を生じますし、不動産であれば定期的に賃貸収入を生じますが、ビットコインはデジタルデータが存在しているだけで、それ自体は売上や利益を生じるものではありません。
- ビットコインには「金(gold)」のような実用用途が存在しない。金は酸化せず電気抵抗が最低の金属で、宝飾品やLSIの配線や端子メッキなどの実用用途(実需)があるので価値がゼロになることはないが、単なるデジタルデータであるビットコインは実用の用途が無く価値がゼロになることも可能である。ただし、人々がビットコインを愛好する限り、キリスト教やイスラム教や、サッカーやチェスのルールの様に、その価値は永続し得る。
- ビットコインのブロックチェーンは、人類が過去に獲得したあらゆる手段を凌駕するデータの堅牢性を有している可能性があり、データ資本主義の時代にデータ保存用途に価値があるとするならば、無限大の価値を有する可能性がある。例えば、ビットコインのブロックチェーン上の送金メッセージ(ハッシュ値)にプロポーズの手紙を記録することもできるし、家族写真のデジタルデータを記録することも考えられる(但し現在のところ1ブロック80バイトなので記録するために高額な送金手数料が掛かってしまう)。
- 暗号通貨には、「発行上限が決められているものと、決められていないものと、ステーブルコイン」の3種類がある。ビットコインの発行上限は2100万枚に設定されており、現時点で約1980万枚(約94パーセント)が発行済みとなっている。総循環ビットコインはこちらを参照。ビットコインの新規発行による価値の希薄化(発行数の増加)は最大でも約1.06倍である。ステーブルコインはあらゆる意味で仮想通貨では無く、単なる詐欺である。
- ビットコインの時価総額は、2025年1月現在で310兆円になっているが、日本円のマネーストック広義流動性残高は、2020年10月時点で1914兆円となっている。日銀のマネーストック統計はこちらを参照。日本経済は、GDP比率で言えば、世界GDPの5.3パーセントに相当しますので、世界マネーを日本マネーの20倍と仮定すると、1914×20=38280兆円が世界マネーとなる。
- 上記ビットコインの時価総額310兆円を、世界マネー38280兆円で割り算すると、310÷38280=0.0081となり、約0.81パーセントとなる。すべてのお金がビットコインに切り替わった場合は、ビットコインの時価総額は現在の123倍になる。ビットコインの現在価格を1600万円とすると、123倍は19億6800万円となる。仮にすべてのお金の1パーセントがBTCに切り替わるとした場合には、2桁ずらしまして、1BTC=1968万円ということになります。
- ビットコインは「デジタルゴールド」と言われます。金は有史以来19万トンが採掘されましたが(参考田中貴金属サイト)、可採埋蔵量の90パーセントが採掘されたと言われています(参考world gold council)。金の時価総額の計算方法は様々なものがありますが、仮に19万トン=190000000000グラム×1グラム時価14000円とすると、2660兆円となり、この半分がBTCに置き換わると仮定すると、BTC時価総額が1330兆円となるので、現在の時価総額の約4倍となります。現在のBTC価格の4倍は6400万円となります。
ということで、当サイトの勝手な推測となりますが、マネーサプライの側面からみると、1BTC1968万円となり、金の時価総額からみると1BTC6400万円というのがひとつの考え方となります。現在の1.2から4倍ですから、凄いとも言えるし、ゴールは近いのかとも言えるわけです。微妙な数字ですね。
しかしこの「マネーサプライ1パーセント」「金時価総額の半分」には何の根拠もありません。各自よく考えて自分なりの結論を出すことをお勧めいたします。また、これらの時代変化に要する時間がどれくらいなのかということも考えてみる必要があるでしょう。BTCがマネーサプライの1パーセントに達するまで何年かかるだろうか、BTCがゴールドの半分を代替するまでに何年かかるだろうかと考えましょう。
※2025/2/1追記
ビットコインはリスク資産か安全資産か
2025年に入り、長期金利が上昇し続けており、景気循環の波が、景気後退の直前期に差し掛かっていることが示唆されています。2001年ITバブル崩壊、2008年リーマンショックのような暴落が懸念されています。そんな状況ですが、ロバートキヨサキさんなどは「暴落が来るからデジタルゴールドであるビットコインを買え!」なんてご主張されているようです。発行上限が決められていることが、埋蔵量が決まっている金と同じということで、デジタルゴールドとも呼ばれているからです。
もしもビットコインが安全資産であれば、安全資金(リスクを取りたくない投資家の資金)が流れていくので、金の時価総額が減るはずです。安全資金の量は変わらないのですから、右にいくか左に行くか、ゼロサムの関係にあるわけです。金を買っていた安全資金が、金を売ってビットコインを買うなら、金の時価総額が減少し、ビットコインの時価総額が増加するわけです。金の時価総額とビットコインの時価総額を足せば一定額になるはずです。
それでは金価格(金の時価総額)の推移を見てみましょう。

あれ?金の時価総額は増え続けてますけど?それも垂直あげに近い勢いで!金からの資金逃避は起きてません。安全資金の移動は起きてないというわけです。それなら誰がビットコインを買っているのか、それはリスク投資家が買っているということにならざるを得ないわけです。
※参考記事
素晴らしきデフレの世界
データ資本主義
ROA,ER,PER,PBRを復習
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