反進歩史観

デイビッドウォレスウェルズ「地球に住めなくなる日」では、今世紀末に気温が8度上昇して海水面が60m上昇するなど、衝撃的な内容ですが、気候変動が人類の歴史観にも影響を与えていると論じています。

気候変動がもたらす生態系や人類自身に対する壊滅的な悪影響を考慮し、「歴史は常に正しい方向に進んでいる」という進歩史観の否定、つまり反進歩史観が出現しているというのです。

反進歩史観の先駆けは2005年のジャレッド・ダイアモンドの「文明崩壊、滅亡と存続の命運を分けるもの」です。彼は新石器革命を「人類最悪の失敗」と断じています。人類は便利な道具を手に入れたのですが、そのことによって逆に不幸になってしまったのかもしれないのです。

イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリは2014年の「サピエンス全史」で、農業革命で「我々は小麦を飼いならしたのではない。小麦が我々を飼いならしたのだ。」「農業革命は史上最大の詐欺であった」と主張しています。

アメリカの政治学者ジェームズ・C・スコットは2017年の「反穀物の人類史」で、現在私たちが理解するような国家権力と、そこに付随する官僚主義、弾圧、不平等が出現したのは、小麦の栽培に端を発すると論じています。

産業革命の産物である内燃機関やコンピューターやインターネットが、人々の生活を便利にした反面、人々の生活を不幸にしているかもしれないという懐疑的な見方が生まれているのです。気候変動が直接影響している、海水面の影響による小島国家の消滅やベニスの水没などを目の当たりにして、人類もとうとう問題に気付き始めたのです。超大型ハリケーンや記録的豪雨や山火事などの自然災害の増幅も、気候変動との関連性が主張されるようになりました。

https://www.google.com/search?q=ベニス高潮&tbm=isch

21世紀の我々は、これから発明される新しいテクノロジーや、政府が導入を推進する新しいイノベーションを、「新しくて良いもの」と鵜呑みにせず、反進歩史観の観点で反省してみることが必要になってきます。そして、気候変動地球温暖化問題のように、人類を壊滅に陥れるような問題については、自分自身の行動を開始しなければならないでしょう。グレタトゥーンベリさんが飛行機に乗ることを拒否しているように、それがどんなに便利で、公的な権力から推奨されているものであっても、導入を拒否すべきことがあり得るのです。

この判断をする場合の基準は、単純ですが「幸福かどうか」ということで良いでしょう。ユヴァル・ノア・ハラリさんは、狩猟採集民が農業に従事するようになって食料の収穫は増えたが、朝から晩まで穀物の世話に明け暮れて、狩猟採集民よりも自由時間が減少してしまったと分析しています。現代日本のサラリーマンも、単身赴任で生まれたばかりの赤ちゃんと離れ離れに生活したりしているのも、「それが本当に幸福なのか」と自問自答すべきことかもしれません。

Gross National Happiness

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1972年にブータン王国の国王ジグミ・シンゲ・ワンチュクが提唱したGross National Happiness GNHがひとつの参考になるでしょう。主なアンケート項目をご紹介いたします。

【満足度】自分で幸せだと思うか、幸せになるにはどのようなことが必要か?
【精神面】自分自身がスピリチュアルだと思うか?お祈りや瞑想をするか?
【自殺について】自殺を考えたことがあるか?実行しようとしたことがあるか?
【環境に関する教養】身近な植物の種に関する知識、水路のメンテナンスが重要だと思うか、自分で植林をするか。
【Cultural literacy】地域の祭り、祭りの意味、祭りで行われるダンスや歌の意味の知識について
【信用感】ブータン人/近所の住人をどれだけ信用しているか?

日本でも、県民幸福度ランキングというものがあり、経済的な尺度以外の幸福度を測定する努力が続いています。

https://news.tiiki.jp/articles/4482

日本国内で幸福度を考える場合には、幸福度が高いとされる都道府県を旅行で訪れてみることも良いかもしれません。時間がゆっくり流れているかもしれません。それはストレスが少ないということを意味するのかもしれません。何かを感じ取ることができるでしょう。

※参考記事

サピエンス全史、上巻

サピエンス全史、下巻

幸福革命


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