21Lessons 第2部政治面の難題

イスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリさんの最新作「21レッスンズ-21世紀の人類のための21の思考」、少しずつ読んでいます。管理人の読解を提示致しますので各自読んでみて下さい。

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5、コミュニティ
過去2世紀にわたって、コミュニティの衰退が続いたが、それが社会的混乱や政治的混乱を招いている。トランプ当選に衝撃を受けたフェイスブックのザッカーバーグCEOはコミュニティの構築を助け、コミュニティを再建するツールを提供すると約束した。しかし、真のコミュニケーションを深めるためには、オンラインだけでなくオフラインのコミュニケーションも深める必要がある。グーグルグラスやポケモンGO、バイオメトリックセンサーやブレインコンピューターインターフェースは、オンラインとオフラインの区別を取り除き、両者を融合させようとしている。そのコミュニティをAIが支配しようとしているのだ。

6、文明
シリア内戦、イスラミックステート、ブレグジットなどの問題は西洋文明とイスラム文明の衝突のように理解されることが多いが、人類の種はひとつであり、地球には人類のひとつのグローバル文明しかないと考えるべきだ。それは、オリンピックの組織力、ドルの通用力、世界中の知識人のアインシュタインの方程式に対する態度を見れば理解できるだろう。21世紀の難題は皆グローバルであり、気候変動による生態系の崩壊、AI革命による人の仕事の無用化、バイオテクノロジーによる人類のアップグレードなどを受けて起こるであろう紛争は、単一文明内の兄弟ケンカとでもいうべきものだ。

7、ナショナリズム
19世紀と20世紀に魅力的に見えた国民国家のナショナリズムは、グローバルな問題には対応できない。核戦争、気候変動による生態系の崩壊、情報およびバイオテクノロジーによる技術的破壊、これに対処するにはナショナリズムは無力である。宇宙船地球号の乗員としてナショナリズムの愛国心と矛盾しないグローバリズムを育むべきであるし、選挙の際には候補者のグローバルな政策を尋ねてみて欲しい。

8、宗教
近代以前に、宗教は、農業や医療などの技術的な問題や、経済的な問題を解決する役割を果たしていたが、科学や経済学の勝利により、これを失った。だが、人々にアイデンティティを与える宗教の能力は維持されており、宗教はナショナリズムと結びつくことにより延命してきた。ナショナリズムに奉仕する宗教は、人類を敵対しやすい多くの陣営に分割している。これがグローバルな問題に対する我々人類の解決策を阻んでいるのだ。

9、移民
グローバル化は、世界中の文化の差を大幅に縮小させたが、文化間の接触が増えており、政治制度や集団的アイデンティティに摩擦を生じている。これは現在EUにおいて最も差し迫った形で、実験が行われていることである。人類は人種差別は克服しつつあるが、文化差別は克服できていないし、それが人類学や社会学や歴史学や行動経済学の根拠を提示しているために、間違っていると断定することもできない。コカ・コロナイゼーション(アメリカ文化のグローバル化)はどう扱うべきなのだろうか。移民の受け入れは民主主義の過程を通じて決定されるべきだが、私たちはグローバルな世界に生きており、相互に移民になり得るのだから、倫理的責任は無視すべきではない。

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第2部は、トランプ当選と、ブレグジット可決、その他ナショナリズムの流行問題をからめて政治問題を中心に論じています。21世紀のグローバルな問題を前にして、内輪もめしている場合では無いよと言っているようです。自由と民主主義の過程を通じて、人類全体が難題解決に向けて前向きに進んでいくべきだが、世界共通の利益を考慮して進みなさいという主張です。

※参考記事

サピエンス全史、上巻

サピエンス全史、下巻

ホモ・デウス上巻

ホモ・デウス下巻


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