毒ガス検知装置の性能が低かった頃、炭鉱夫たちは坑道にカナリアを連れていきカナリアが鳴きやむと毒ガスが出ている兆候だとして避難行動を取って安全確保していました。カナリアは人間よりも敏感に毒ガスを検知できたからです。
このことから、「炭鉱のカナリア」は、様々な事項について人々が認識できる前の「兆候」を示す言葉として様々な場面で使われるようになりました。例えば、「逆イールド発生は株式市場における炭鉱のカナリアだ」などと言われたりします。
「炭鉱のカナリア」は危険予知センサーだったのです。
もちろん、シンギュラリティ対策の当サイトにおいては、社会変革の兆候として「炭鉱のカナリア」を考えてみたいと思います。
イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリは、労働市場の大変革の兆候として炭鉱のカナリアを用いて次のような説明をしています。
アルファゼロは4時間の機械学習により人類(世界チャンピオン)を打ち負かしたチェスプログラムストックフィッシュを打ち負かした。これは人間の労働の価値に関する「炭鉱のカナリヤ」かもしれない。
ハラリさんは、特定の職業の事を書いているのではなく、人間の全ての職業が機械学習によって駆逐される兆候が既に出ているかも知れないと述べているのです。
機械学習の性能が飛躍的に向上したのは、2012年のILSVRCでカナダのトロント大学のアレックス・クリジェフスキー、イリヤ・スツケヴェル、ジェフリー・ヒントンのチームが、DNN(ディープニューラルネットワーク)を用いた画像認識エンジンで、2位の東大チームに10パーセント近い大差をつけて優勝したことが大きなブレークスルーでした。
ILSVRC
この事実は、特に大きく報道されることもなく、また、人々に大きな注意が払われているわけでもありませんが、シンギュラリティ時代、ゲームチェンジ時代の社会変革の兆候であるかも知れないのです。
21世紀の子ども達は、自分達が進む道筋にどのような変革が待ち受けているのか事前に知るために、危険があれば事前に回避できるように、自分にとっての「炭鉱のカナリア」を確保して進んで行く必要があります。
シンギュラリティ時代の「炭鉱のカナリア」は、ITとバイオの双子の革命の進行状況に関する基礎知識と最新知識になります。具体的に言えば、AIテクノロジー(ディープラーニング機械学習)と、バイオテクノロジー(遺伝子編集、遺伝子プログラミング)の基礎知識と最新ニュースです。その技術がどのようなもので、今現在どこまで進んでいるのか、これをできるかぎり正確に知る必要があるのです。「私は法学部だから関係ない」、「私は経済学部だから分からない」、「私は文学部だから無理」、「私は医学部だから不要」という主張は通用しません。AI研究者やバイオ研究者だって、片方だけ勉強していてもダメです。両方を知らねばなりません。社会全体の構造を変えてしまうような、産業革命のような大変革がやって来るので、人類全体が当事者になるのです。
※参考記事
21Lessons 第1部テクノロジー面の難題
ゲームチェンジ
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